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中学の頃から、私の全ては音楽だった。
音符は私を裏切らない。
楽譜の中に全てが書かれてあって、作曲者の意図をすべてここから読み取れる。
五線譜に没頭して、本来ならば先生しか読むことのできないスコアも勝手にコピーして、一生懸命読んだ。
その甲斐あってか、3年生の時に副部長と全体指揮を任せられた。
全体指揮というのは生徒の中での指揮を務める人で、先生が合奏に来られない時、先生の代わりに合奏をする役職だ。私の代で、初めて金賞を取った。全国には行けなかったけれど。
高校に上がっても、私は変わらず吹奏楽を続けた。県内でも吹奏楽のレベルが高いところを受験し、合格祝いとしてトロンボーンを両親に買ってもらった。
そこまで値段が張る物ではなかったはずだが、ぴかぴかのそれに心は踊った。
高校2年生になったタイミングで、彼と出会う。
1年の時には、名前はおろか、存在すら知らなかった男だった。
「伊坂朝斗です。写真部です。よろしくお願いします」
クラス替えで同じクラスになって、席が前後だった。
私の作った「安達朔です、吹奏楽部です。よろしくお願いします」というテンプレートに倣ったのが何故だか少し鼻についた。
そこから2週間は、とくになんの交流もなかった。プリントを受け渡すだけの仲。
私は彼を振り返ることもせず、べろん、と腕だけでプリントを渡す。
私と彼が喋るようになったのは、とあるアクシデントがきっかけだった。
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