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05.ジャンキー
「お待たせしており、済みません。いつもの佐藤さんじゃないんですね?」
「あんたがトーアさん? そう。佐藤は別件あるからさ」
運転席のウィンドゥを少し下ろした男は、煙草を咥えながら答えた。
スモークフィルムで暗い車内から、地下駐車場に紫煙が流れていく。
沈没するタイタニック号から逃げるネズミみたいに。
「おれも佐藤だ。勿論偽名だけど。佐藤Bとでも呼んでくれ」
Bは値踏みするように、俺を目で舐めまわす。
気に喰わないオーバック野郎だな。
後部座席のスキンヘッドは、イッちまった目をしている。
「見ての通り、薬物中毒者だ」
「Bさん、宿泊中のクスリはご法度だぜ」
「クスリが切れたら、暴れちまうよ」
「ホテルは一人部屋だ。過剰摂取で死ぬリスクだってある。
そいつはモットーに反する。それと、うちは全館禁煙だ」
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