0人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休みに町内会のキャンプに参加した。
夜はみんなで川原で花火をして楽しんだ。
その後、大人たちが花火の片付けをしている間に僕たち子供はすぐそばのテントへ向かった。
暗闇の中で懐中電灯を顔の下から当ててオバケごっこをやった。
目の前に浮かんだ四人の顔が不気味で笑ってしまった。
テントに入ってゲーム機を取り出しながらふと思った。
あれ?子供は僕を入れて四人だよな。
さっき目の前に四人いたような……
気のせいかなとゲームをやりながら眠りについた。
夜中に起きてテントを出てその辺の草むらに用を足した。
チャックを上げた時に、
ジャリッ
後ろから音がした。
ジャリッ………………ジャリッ……
足音にしては普通に歩くには間隔が長かった。
まるでゆっくり大股で歩いているような間隔だ。
それが僕のすぐ後ろで音がしている。
振り向きたい……振り向けない……
さっきのオバケごっこの四人の顔を思い出した。
息が荒くなって手が震えた。
背中がひきつったみたいにビクビクする。
ジャリッ…………ジャリッ……
暗闇の中で川の流れる音と”その音”しか聞こえない。
頭が痛い。僕は目をつぶった。鼻から息を吸った。
「誰だ!!」
叫びながら振り向いた。
誰もいなかった……
「誰もいない……」
自分の呟きに寒気をおぼえた。
周りは殆んど見えない位に暗かった。
テントに駆け込み寝袋に入った。
ガクガクした体をさすりながら目をつぶった。
ジャリッ…………ジャリッ…
また聞こえる。近づいてくる。
気のせいだ。怖くない。気のせいだ。怖くない。早く朝になれ。
心で呟く。
心臓がドキドキして痛い。喉が乾く。空気が淀んで流れている感じだ。寝よう。とにかく寝ようと目をつぶったまま他の事を考えた。
「おい、しっかりしろ!」
その声に僕は目を開けた。テントの中は明るかった。一緒に来ていた近所のおじさんの顔が見えた。まだ息苦しかった。何が起きたのかよくわからなかった。
取りあえず僕だけ一足先に帰宅する事になった。近所のおじさんの車で送ってもらった。
家に着いた時には落ち着いていた。
大人になってもあの時の事を思い出す。
花火をした後に闇の中に懐中電灯の光で浮き出た四人の顔も思い出すが、みんな知らない顔だった気がする。
自分がテントに入った時には他の子たちは既にいた。
思い違いだったのか……
真実は未だに何もかも暗闇の中のままだ。
了
最初のコメントを投稿しよう!