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そうだ。僕はその声を探していた。
この声に出会うために、僕はあの暗い場所から出てきた。
そうたは呼んだ。必死に叫んでその声を呼んだ。
「そうた」
すぐ傍で聞こえるその声。
間違いない。その声だ。
その声はもうすぐそこにある──────。
その時、全身を柔らかい力が包み込んだ。
「そうた。やっと会えた」
穏やかなその声がそうたの怯えた心を包み込む。確かな温もりにそうたの怯えは少しずつ溶けていった。
ゆっくりとした穏やかに響く呼吸音。一定のリズムで揺れる力強い鼓動音。
それも知っている。その音たちもずっと聞こえていた。
いつの間にかさっきまでの強烈な不安心は消えていた。
そうたの心はすっかり落ち着いていた。
本能が教えてくれた。
戻って来れたんだと。
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