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「光だ」
体感で1キロほど歩いたところで、ようやく出口が見えてきました。
私たちは光を求め、知らず早歩きになりました。月並みな表現をすれば、砂漠でオアシスに出会ったような気分でした。命を失いかねない状況からの脱却を、他になんと例えればいいのか分かりません。そんな真の恐怖を、私は今まで味わったことがありませんでした。
やがてトンネルが終了しました。
私たちは脱力したり叫んだりしながら笑い合いました。
「はあ、面白かったね!」
あれだけ怖がっていた佐々木さんですらそんなことを言いました。
「みんな無事か?」
長澤先輩がみんなの顔を見回していきました。つられて私もみんなを見た、その時です。
「怖かったね〜!」
私の隣に、知らない人が立っていました。
いえ、人と呼べるのか分かりません。
目や鼻があるべき位置からちょっとずれており、子供が描いた下手な漫画のような顔をしているのです。
ええええええええええええ!
誰この人!!
こわいこわいこわいこわい、こわいよーーーっ!!!
私はひとりで大パニックに陥りました。
「もう〜富田林くん、怖がりなんだからー」
白石先輩が笑いました。
富田林、だれ! 聞いたことない!!
「もう、怖すぎて白石先輩に抱きついちゃおうかと思いましたよ〜!」
「お前、彼氏の俺がいる前でよくそんなこと言えるなー。しょうがねえやつだな、富田林はー」
長澤先輩も笑いました。っていうかみんな知ってんの!?
「まあ、富田林くんくらいのイケメンにそう言われたら悪い気はしないけどね」
「おいおい待てよ。ちょっと本気じゃん!」
えええええええええええ!
この人のどこがイケメンなの!?
ド下手漫画じゃん!
目と目の高さ合ってないじゃん!!
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