トンネルで会いましょう

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 こうして私たちは全長280メートルのトンネルの中へと入っていきました。  はぐれないように、後ろの人が前の人の体や服を掴んで暗闇の中を進みます。  決して長くはないトンネルなのに、S字のせいで風の通りが悪いのでしょう。独特の空気の(おり)のようなものを感じて息苦しかったのを覚えています。高速道路が近くに作られて以来、ここを車で通る人も滅多にないと聞きました。空気の(よど)みはトンネルが最近使われていないせいも多分にあるのだと思います。  ゴオ、と何か音がしました。 「何?」 「風じゃない?」 「無風だと思うけど」 「出口の方で突風がぶつかったのがここまで響いてきたんじゃないかな……」  心霊現象研究サークルなのに、誰も霊のせいだとは言いません。  それがかえって、私に霊の存在を意識させました。  何かがいる。  何か、とんでもないものが近くに。そう感じました。  言いませんでしたが、トンネルに入った時からずっと右肩が重いのです。  気のせいだと思い続けて、とにかく出口が近づくのを待ちました。  永遠にこの暗闇に閉じ込められるのではないか。わけもなくそんな気がして、泣きたい気持ちにもなりました。今までいくつかの心霊スポットを回ってきましたが、ここが一番怖かったと思います。  しくしくと佐々木さんのすすり泣く声が後ろから聞こえてきました。 「怖いよ……もうだめ、引き返そうよ……」  私の手を握る彼女の手が、幽霊のような冷たさでした。
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