二人の出会い

2/4
前へ
/8ページ
次へ
 女は重い足取りで一段、また一段と上がっていく。女をまとうスーツは、ひどくよれてしまっており、それを勲章と呼ぶにはあまりに目が虚ろ、口は半開きで締まりがない。むき出しの外階段を一段、また一段と上がるたびに、軋む音がして、その音と一緒に生気がなくなっているような感覚にさえなってしまう。  少し強い風が吹いたと思ったら、女が少しふらついて、手すりにつかまった。その振動で女のポケットからスマートフォンが滑り落ちる。シンプルの中にもどこか可愛らしさとスマートさが見え隠れするカバーに覆われたそれは、遥か下のアスファルトに打ち付けられた。しかしそんなことはお構いなしに、女は体勢を戻すとまた一段、一段と足を上げ続けた。  女はついに登り切った。一段と強い風が吹き、女の髪を揺らして顔にかかったが、そんなことはどうでもいいのだろう、髪のことなど気にもせず鉄の柵へ近づいた。そして鉄の柵を握ると鉄棒でも始めるかのような軽い足取りで、柵の向こう側へと降り立った。  女は振り返るように下を見つめ、少し足がすくんだように見えた。一度正面向くと意を決したように一つうなづいた。そして背中を柵にもたれかからせようと体の向きを変えた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加