第三章 創られた世界

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『ッ!』 ゼロの左腕に当たった。が、レイがゼロを大きな翼で庇う。 『フフッ』 レイが皮肉な笑みを浮かべる。挑発しているのだろうか。スイは常に冷静な判断で対処する。そちらがその気ならばこちらも武器である棒を投げ飛ばし、拳に力を入れて立ち向かう素振りをする。 「守っているだけですか?それじゃあ戦いになりませんよ?」 『クッ、ウルサイ!』 しびれを切らし力強く羽ばたくレイ。どうやら、こっちの悪魔は頭に血が上りやすいらしい。 一方、あっちの悪魔(ゼロ)はスイの様子を観察し動きを予測して動いているように見える。スイは落ちている棒を拾い、再びゼロに向かって振り下ろす。 「はぁっ!」 『ヤハリナ』 スルリ、と攻撃を回避すると蹴りを入れてきた。 「ぐぁっ!」 避けようとしたが間に合わず攻撃を受けてしまった。ごろごろと砂の上を転がり、波打ち際まで飛ばされる。 『タタカイヲヤメテ、オトナシクコロサレルカ?』 「そんなわけないだろう!俺はお前たちを絶対に殺す」  そう言い、威勢を見せる。 『アキラメガワルイナ』 『ホントウニソノトオリデスワネ』  ゼロがスイに近づき、腕を持って持ち上げようとした。が、スイは隠し持っていたナイフで、ゼロの胸めがけて突き刺した。 ブシュッ! 『ナッ・・・』 ゼロが力なく地面に舞い降り、倒れた。突き刺した胸から勢いよく血が噴き出している。もう助かることはないだろう。 『ゼロッ!』  レイが駆け寄ろうとゼロに近づこうとしがゼロは首を横に振った。 『クルナ・・・。レイ、アトハ、タノンダ・・・・・ゾ。ワタシハ・・・サキ二、イクカラ、ナ』  レイにそう言い残し、空気に溶けるように跡形もなく消えていった。 『ヨクモ、ヨクモゼロヲ!アァァァァァー!!』  悪魔にも心があるのだろうか、レイはゼロを殺されたことに叫びを上げた。 形相を変えスイを睨みつけると、凄まじい速さで一直線に迫ってきた。スイは素早く起き上がるとゼロの胸元からナイフを抜き取り身構えるが、簡単に回避できてしまった。 「アッハハハ、お前もゼロと同じこの海が墓場だ!ぶっ殺してやる!」 『ウルサイ、ダマレ!シネエェェェェェ!!!』  相変わらずレイは頭に血が上がっている。このままではまともに戦えないだろう。今にも癇癪を起してしまいそうな勢いだ。 「怒りで我を忘れているのか!可哀そうに、これじゃあまともに戦えないなぁ!」  スイはあまりにも面白かったので涙を流しながら大きく笑った。 『オマエ、コロス!!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!』 「これで終わりだ」  スイは小さな声で呟くと、再び一直線で迫ってきたレイに火を放った。 『ギャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』  叫び散らしながら空を飛び回っている。  実に滑稽だ。 烏はこうして誕生したのだろうか?とすら思ってしまう。炎に包まれ空を飛び回っていたレイはやがて海へと落ち、深い深い海底へと沈み、海流に巻き込まれて跡形もなく消えていった。
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