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「スイがこうして私の家に上がってゆっくりするのは初めてね。だって、いつもすぐどこかに行ってしまうもの・・・ねぇ、スイは私の事どう思ってるの?」
彼女がこんなことを言うのは初めてだったので驚いた。スイは渋々口を開く。
「僕がリアさんを人としてどういう風に見ているかって事ですか?」
リアは静かに頷いた。
「リアさんはいつも優しくて、女性として素敵な人だと僕は思います。リアさんは僕の事どう思っているんですか?」
スイは質問を返してみた。
「私は嫌われていると思っているわ。だって、スイは他の女性とはよく話すのに、私とだけはちっとも話してくれないじゃない?だから・・・」
リアの涙が頬をつたう。
「そうだったんですか・・・ごめんなさい!僕、リアさんの事少しも考えていませんでした」
スイは申し訳なさすぎて顔を足元に向けてしまった。
「ぐすっ、ううん、いいのよ。お仕事で忙しいんだもの、困らせてごめんね。
でも時々でいいから、こうして一緒にいてほしい。スイがいないと寂しいわ」
「はい、わかりました。これからは時間のある時、家に遊びに来ますね。僕、リアさんに悲しい思いをさせたくないですから」
「本当?ありがとう、私嬉しい!」
リアは顔を輝かせると、用意しておいた物をスイに渡した。
「これは、なんですか?銀色に輝いていて綺麗ですね・・・」
「それは耳に着けるアクセサリーよ。『イヤーカフ』って、お店の人がいってたわ。スイ、いつも仕事でケガしてるわよね?御守りにと思って買ってきたの」
「そうなんですか、わざわざありがとうございます。僕のためにこんな高価な物を・・・」
スイは申し訳なさそうに礼を言った。だが内心は嬉しい気持ちでいっぱいだった。自分の事をこんなにも想ってくれる人がいると思っていなかったからだ。
スイは左耳にリアから貰ったイヤーカフを着けてみた。顔が熱い、恥ずかしくて照れている事を自覚する。
目の前に立っているリアはとても嬉しそうに目をキラキラと輝かせてこっちを見ている。スイは思わず視線を足元に逸らした。
「スイ、とっても似合っているわ!あ、ちょっと待って。今、鏡を持ってくるから」
そう言うと部屋の奥に行き手鏡を持って戻ってきた。
「はい、自分で見てみて」
「・・・うん。ありがとう、リアさん」
「リアでいいわ」
「わかりました・・・リ、リア」
林檎のように赤くした顔をさらに赤くしてスイは言った。
「ふふっ、スイったら」
「うぅ~、なんだか緊張してしまいます。僕こういうのに慣れていなくて」
「そういう所があたしは好きよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
いよいよ喋れなくなったスイである。
そんなこんな時間を過ごしていると、あっという間に日が暮れ、夜が訪れようとしていた。
「では、僕はそろそろ帰りますね。リアさん、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう!楽しい時間でしたわ、じゃ帰り道には気を付けてね」
「はい、ありがとうございます。暗いので十分に気を付けます、ではお邪魔しました」
「うん、またね」
リアに別れを告げた後、スイは自分の住んでいる家に向かって歩き出した。この時のスイは、まさか自分がリアに騙されていたなんて知る由もなかった。
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