第二章 リア

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そんなある日、珍しくあの少女が家にやってきた。 「こんにちは!スイ、いる?」  リアの声が聞こえ、スイはゆっくりと扉を開けた。 「こんにちは・・・リアちゃん」 「スイったら、ちっともあそびにきてくれないから、わたしからきちゃった!」 「ごめんね。ぼく、ちょっとそとにでるげんきがなくて・・・」 「どうしたの?スイ、なにかあったの?」  リアに悩み事を相談しようか迷ったが、心配をかけたくなかったので言わない事にした。 「ううん、たいしたことじゃないから、だいじょうぶだよ。ありがとう、リア」  そう言ってスイはにっこりと微笑んだ。 「そうなの?それならいいけど・・・」  リアは、スイが他人には言えない隠し事をしていることがわかっていた。彼に嫌な思いをさせたくなかったので、自分から言い出すのを待つことにした。 「スイはさいきん、おうちでなにしてるの?」  リアの問いにちょっと困ったが、何とかごまかすようにスイは言う。 「えっと・・・ほんをよんだり、はなをながめたり、えをかいたりしているよ」 「そうなのね~、たのしい?」 更に困る事を問われてしまう、実際にしていないことなのだから。 「うん・・・タノシイヨ」  嘘を隠しきれてないことに流石に自分でも気づいているが、リアは 「そうなんだ」と一言いっただけだで、後は何も聞いて来ようとしなかった。もしかして、僕が父親を恐れているということをわかっているのだろうか?・・・と思い込んでしまう。 「ねぇ、わたしきょうはもうかえるわ!ようじをおもいだしたの。スイにあえてよかったわ。またくるわね」  そういうと、リアは玄関へと向かい、扉を開けて外に出ようとした。 「まって・・・」  スイはリアの左手首を掴んでひきとめた、不安な気持ちで心が耐え切れなくなっていたのだ。リアが振り返ると、スイの目には涙が今にも零れそうな程、溜まっていた。 「リア、じつはね、ぼく、おとうさんが・・・・・」  そこまで言うと言葉を止めた。リアに心配をかけないつもりだったのに、つい口にしてしまったからだ。視線を足元まで落としてしまう。ここまで言うと、もう後に引き下がることは難しい・・・。暫く俯いていたが、覚悟を決め、見上げるとリアは真剣な表情でこちらを見てくれていた。 スイはリアに全て話した。 「リア、ぼくのおとうさん、どんなひとにみえる?」 「う~ん、いつもやさしくほほえんでいて、いろんなびょうきと、けがをなおしてくれるから、わたしにはとってもいいひとにみえるよ」 「ぼくもそうおもってた!だけどね・・このあいだ、ぼくなんかにしんぱいされるいみなんか、ないっていわれたんだ。そのときのおとうさん、すごくぼくのこと、いやそうにみてたんだ・・・。それとあとね、 『あのおんながいれば、あいつからときはなたれる』 っていってたんだ。『あいつ』っていうのは・・・ぼくのことなんだとおもうんだ。もしかしたら・・・・・ぼく、おとうさんからみすてられるんじゃ、ないかなって、お、おもって・・・・ぼ・・・ぼく、こわいんだぁっ! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!」  スイは怒りと悲しみが交わった感情に襲われる。形相を変え、周りの物という物を蹴散らした。 その姿はまるで悪魔がスイの身体にとり憑いたようだった。  リアはあまりの驚きに、口に手を当てて動けずにいた。しかし、その口には笑みがしっかりと浮かんでいた。 (あぁ、なんて美しいの!こんなにも嘆き悲しんで、苦しみ足掻いて・・・) 「ッ!あ、スイ、スイ!」  リアは冷静にさせる為、スイの名を呼び、何とか力づくで暴れるスイの身体を封じる。 「スイ、スイッ!わたし、リアをみて!!」  やっと我に返ったスイは、漠然とし、リアを見た。 「ぼくは・・・・・・・・・・・・・・」 溢れ出る涙は止まることなく、流れ続けている。そんなスイを見てリアはこう言った。 「わたしもね、こういうことをいわれていきてきたのよ。あなたひとりだけじゃないから、わたしがスイをまもるわ」 「くっ、ううぅ、うあああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」  リアの腕の中で、スイは嗚咽をあげた。彼がこうして誰かの腕の中で泣く事は今日が初めてだった。 「ありがとう。・・・リア」 「ううん、いいんだよ。もう、おちついた?」 「うん。もうだいじょうぶだよ」 「なら、よかった。じゃあ、またあした!」 「うん!またあしたね」 リアは家に帰っていった。彼女の背中が見えなくなるまで見送った。  この時、スイにはリアに対する信頼が芽生えていた。
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