第二章 リア

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明け方、部屋の片隅で横たわる何かがあった。それは、既に息を引き取った祖母の姿だった。  祖母の埋葬が終わると、リアは自分の部屋に戻り、祖母は病気でなかったにも関わらず、何故亡くなったのだろうと考え、途方に暮れていた。 「どうして、どうしてなの、おばあちゃん。わたしをひとりにしないで、おいていかないでよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  その時だった、リアに語りかける何者かの声がした。 『オマエハ、ソウイウサダメナノダ』 「誰⁉」  辺りを見回すが誰もおらず、人影もなく、気配すら感じなかった。その『声』は自分の身体の内側から語りかけている。気が付いたが、理解するのに随分時間がかかった。 やっと理解が追いついてくると、実体を持たない『声』に恐る恐る聞いてみた。 「あなたは、だれなの?」  すると『声』が問いに答えた。 『ワタシハ、オマエダ』  さらに困惑してしまう。 (『ワタシハ、オマエダ』ですって?じょうだんじゃない。わたしはこのせかいに、ただひとりしかそんざいしないにんげんなんだ!!) リアは意思を強く持った。もう一人の『自分』に抗う為にはそうするしかなかった。 「だまれ!おまえは、わたしじゃない!わたしは、わたしなんだ!」  すると嘲笑うようにもう一人の『自分』は言う。 『ワタシヲウケイレナイノカ。フン、オロカナ。コノワタシカラ、ノガレルコトハデキナイトイウノニ』  リアは、もう一人の『自分』に否定を続ける。 「わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。わたしはわたしだ。」  思考回路が焼けるように熱くて痛む。彼女の『身体』はもう限界を迎えていた。 ああ、意識が遠くなっていく・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「ワ・・・タシ、・・・・・ハ!・・・・・ワ・・・タ・・・・・シ、ダ」 いつの間にか、『リア』という名の彼女は完全に消えていた。 少女だった、その『身体』には、『悪魔』が宿り、怪しくも優しく感じる不気味な笑みを浮かべていた。
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