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「そろそろ起きろ~? ご飯にするぞ~」
お気に入りのタオル。ふかふかのクッション。
まだ寝てたいよぅ。
うえのにいにが窓を開ける。
気持ちのいい風が、ちょうどいい量で入ってきた。
「モナカ、起きよっか」
傍で寝ていたしたのにいにが、私を抱き上げてソファーからおりる。
イケメンだな~どっちのにいにも。
「いい天気だし、後で散歩に行こうな」
「久々だから、大きい方のドッグランにしようよ」
「だな!」
大きな窓からお日さまが入ってくる。
いつものように幸せな朝だった。
「ねぇ、いいかげん『にいに』って変じゃない?」
ドッグランでご近所のミラーナとレオンに会った。
彼女はいっつも余計なことを言ってくる。
「あのね? にいに達は妹が欲しくて私を見つけたの。
あなたのご主人がイケメンじゃないからって妬かないでくれる?」
「わ、私のご主人は味わい系なの! かっこ悪くなんかないんだからね!」
「ええそうね」
「なにその上から目線! からだは私よりずっと小っちゃいくせに~」
「うん。確かにあんたはキレイ! シュッとしておっきくてゲームの聖獣みたいよね」
「そ、それほどでも、じゃなくてご主人はぁ」
「味わい系でしょ?」
「そう!」
「じゃあね。私あっちの専用エリアだから」
「もう~話終わってないのにぃ」
「よう、モナカ」
「おはよう、レオン」
「きょうもチビだな」
「あんたがおおきすぎるんだよーだ」
なんだかんだ言っても、ふたりは大切な犬達だ。
柴犬の愛情表現はちょっとワイルドで、悪気は無くても、小さな犬達を驚かせてしまうことがある。
だから、ボルゾイのミラーナやハスキーのレオンがいてくれたことはとても幸運だったと思うのだ。
よかった。今日もまだ、いっぱい遊べた。
ねぇにいに。そろそろお家に帰ろう?
私は座り込むと、にいに達を見上げる。
「ん? 疲れたか? そろそろ帰るか」
だっこ。
「ったく~モナカは甘えん坊だなぁ」
下のにいにが微笑んだ。
にいに達はミラーナとレオンのご主人にあいさつをする。
「またね。モナカねえさん」
「また遊ぼうな。モナカ姉」
「ありがとう。またね」
私はふたりに心からのあいさつをした。
ねぇ、早く帰ろう?
そしてあのソファーでお昼寝しよう?
川の字になってテレビ見て、明日もいっしょに窓のお日さまにあたろう?
初めて会った時、にいに達はとても小っちゃくて、黄色いお帽子と黄色いカバンを下げてたよね。
あの時は私も赤ちゃんで、にいに達は私の行くところにどこにでもついてきたよね。
はじめはちょっとうるさいなって思ったんだけど、いつのまにか三人一緒が当たり前になっちゃって‥‥‥。
ねぇ、覚えてる?
でも私、どんどんおねえさんになって。
おかあさんになって。
気がついたら‥‥‥
あと何回いけるかな、公園。あと何回遊べるかな。
私、とても怖くなってきたの。
だからずっと、いいお天気がつづきますように。
お空はいじわるだった。
ねえ、お散歩は?
「ごめんな。今日もだめだわ」
窓の外を見ながら、にいに達がすまなそうに言う。
にいにが悪いわけじゃない。
毎日ほんとにお天気が悪いのだ。
雨はまるで滝だし、カミナリはしょっちゅう落ちるし、
私の大嫌いな掃除機みたいな風が、あっちこっちで吹いてる。
お散歩いきたいな。
でもいいか!
上のにいにも下のにいにも、ずっとお家にいてくれるから。
「どう?」
「あんまり食わないな‥‥‥」
ごめんね。にいに達が心配するから、いっぱい食べようと思ったんだけど。
「無理すんなよ。な? この前みたいに吐くと辛いだろ?」
「きっと、僕達が心配するから元気だよって見せようと思ったんだね」
二人ともわかってくれてたんだ。うれしいな。
早くのぼって、お日さま。お月さまにはわるいけど、早く来て、明日。
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