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——カシャッ
「うへへっ、撮っちゃったー」
結局、誘惑に勝てず、こっそり撮影完了。
「うお、すげぇ密着してるっ。俺ら、ラブラブじゃん。しかも超貴重な寝顔ショットもゲットでき……」
「あぁ、ラブラブだな。が、惜しむらくは、俺が目を閉じている点だ」
「ひっ!」
画像フォルダを見ることに集中してた思考に、甘いテノールが飛び込んできた。
「とっ、土岐っ? おっ、起き……起きききっ?」
うええぇっ? いつの間に起きてたんっ?
驚愕のあまり、スマホが手から消える。
「おっと……気をつけろ。落として破損したら、どうする」
「あ、ありがと」
普通は驚いて下に落とすところ、なぜか俺は真上にピュッと放り投げてしまい、でも土岐が寝起きとは思えない素早さでキャッチしてくれたからスマホは無事だった。
だけど、それはつまり、画像フォルダを開いたまんまの証拠物件が土岐の手に渡ったということで。
「すすすっ、すんません。つい出来心でっ。もうしませんから許して!」
気をつけろって注意してきた少し渋い表情のまま画面に目を落とした相手に、即、謝った。
盗撮の現行犯って、どうなるんだっけ? いやいや、それよりもコレが原因で嫌われたら、俺、どうしよ。
「お、俺! 麦茶のお代わり持ってくるっ」
現行犯、居たたまれないので逃亡します!
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