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「ジュリちゃん、学校はどう?」
「楽しそうだなって思う。一年生もたくさんいるけど、学校に人が多くて、名前覚えきれるか心配」
「頑張ってね。晴山のおじいちゃんに認められるには、ジュリちゃんの頭首たる者の教育が必須って言われてるんだから」
「頭首たる者の教育って?」
「跡取りってこと。晴山のおじいちゃんの家には、跡取りが椎見叔母さんところのトキオ、新山おじさんところのマリコ、川下おじさんところのショウマと他にもあげたらキリがないけど、たくさん子供や孫がいるでしょ?晴山おじいちゃんの正式な孫に認められたら、そのみんなと同じ、晴山家の一員になれるから、そうなったら、嬉しいでしょ」
「そりゃ、マリコ姉やショウマ兄と仲良く出来たらうれしいけど、本当にそんなことしなくちゃだめ?」
「お父さんが病気で死んで、うちは晴山のおじいちゃんと疎遠になってしまったわ。認められるには、お母さんがしっかりと働いて、ジュリが常識と礼儀を身につけた立派な大人になることが条件なの。そう言われたの、お母さん。だから、あなたをこの町に連れてきたの。それで、進学校で全国でも有名なスカイアンドシー中学校へ入れたのよ」
「学校へ行くだけじゃ、だめ?」
「とりあえずはそれでいい。でも、ほら、あの学校でも有名な部活あるでしょ、あのラピスクラブっていう会に入って欲しいな」
「ううーん、よく分からないけど、分かった」
「みんなが入ってる部活動で、楽しい活動がいっぱいあるから、きっと楽しいわよ。ジュリが活躍するところ見たいから、入ってもらいたいな。入ったら、お母さん、応援しちゃう」
母は新しく来た町と、新しく入った学校で、私に活躍してと言う。
でも、私はまだ何をしていいのか分からない。
まだ入学式を終えたばかりだもの。
「お母さん、私を助けてくれた人、あの学校にいるかな?」
それより、命の恩人だ。
すごい偶然よ。ものすごく嬉しいわ。
昔助けてもらった、命の恩人に会えるなんて。
「ジュリちゃんを助けてくれた人?先生?」
「ううん、生徒」
「生徒なら、違うんじゃないかな。五年前なら、今中学生の子でも、小学生でしょ。川から助けてくれたぐらいだから、同じくらいの子供だったら大変だったはずだわ。ほら、ジュリちゃんも、大きな体の人だったって言ってたじゃない。たぶん。大人の人だったんじゃないかな」
そうかなあ。
あの伊藤青蔵という生徒が恩人だと思ったのだけれど、違うのかなあ?
「でも、ジュリちゃんがそう思うなら、そうかもしれないわね。一度聞いてみたら?もし、恩人ならお礼を言わないとね。ちゃんと」
「うん」
私もそう思う。命を助けてくれた恩人なら、ちゃんとお礼を言わないとね。
伊藤青蔵という人に聞いたら分かるから、ちゃんと会ってみよう。
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