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私より頭二つ分背が高い、高身長で、すらりとした体形。
横長の切れ長の目をして、鼻筋が高くて、天狗みたい。
「あの、あの時はありがとうございました」
「あの時って?」
「まえに真屋山のキャンプ場で、川に溺れているところを助けてくれましたよね。あの時は、本当にありがとうございます」
「それ、いつの話?」
「もう、五年前ぐらい前のことです」
「五年前・・・?」
伊藤青蔵が思い出すようにして首を傾げる。
記憶を確かめているからだろう、と思った私は、感激してつい喋り続けた。
「いやあ、私、おてんばで、崖の上から転がり落ちちゃって、ごろごろドボーンって。それで、川に流された私を、あなたが岸に上げてくれて、何とか一命を取り留めました。学校で、初めてあなたを見つけて、ずっと探し続けてた人だって気づいて、お礼を言わねばと思ったのです。助けていただいて、ありがとうございます」
出会えたことに胸がいっぱいで、喋り続ける私に、伊藤青蔵はまだ考える様子だった。だんだんと私も、あれっ?と思い始めた。
「勘違いでないかな?僕ではない。五年前なら、ここのところずっとそのキャンプ場には行ってないし、溺れる人を助けた覚えもない」
え・・・?
ちがうの?
「で、でも・・・私」
「人を助けたのなら、もしかしたら、僕の伯父かもしれない。善良で人が良くて、勇敢な人だから。僕の父の兄だから大人で、君を十分助けられる。真屋山ってけっこう険しい山だろう?何か、そのような話も聞いたことがある。山で遊ぶのは危険が伴うから、気をつけなさいよって。川に落ちていた女の子を助けたことがあるからと」
伊藤青蔵の伯父さん?
そうか。だから、伊藤青蔵と似てるんだ。
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