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「……ねぇ、覚えてる?って。おーい!カリム。ちゃんとあたしの話、聞いてた?」
あたしはそう言いながら、木によりかかり眠たそうな目をしているカリムの顔を覗きこむ。
「ん?あっ!サーニャごめん。夜勤あけで眠くて、ボーッとしてた。で、なんの話?」
カリムは眠たい目をこすりながら、あたしの方に視線を向けた。
「城の警備、大変そうだね」
「ああ、色々な。それに、いつ敵が攻めてくるか分からない状況だからよけいだ」
カリムは城がある方角をみている。
「そっか。あっ!そうそう。もう一度いうね。1年前ここでカリムと初めて会ったんだよね」
あたしは、その時のことを思いだしながらカリムに視線を送った。
「……そうだったか?サーニャがそう言うなら、そうなんだろな」
カリムが発したその一言に対し、あたしはキレてしまい。
「カ、カリム!何で、いつもいつも。そんな覇気のない態度なのよ!それもあの時のことを覚えてないって……」
「そう言われてもなぁ……」
「ああ、もういい!今日は、カリムと初めて会った記念日だから美味しい料理をつくったけど。あたしひとりで食べる」
あたしは、渡そうと持っていたオシャレな緑のローブを、カリムの顔めがけおもいっきり投げつけ泣きながらその場を離れた。
カリムは慌てて緑のローブを持つと、あたしを追いかけてきた。
だけどその日、カリムを家に入れることはなく、あたしはベッドにうつ伏せになり泣いていた。
その数日後、あの日カリムがずっと外であたしを待っていたことを知る。……【☆完★】
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