擬似恋愛中毒

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*  まったく、おかしな夢だ。  妙にリアルで、同じことの繰り返し。  バスルームを出て、バスローブを羽織り、リビングの扉を開けたところでまた、ぎくり、と息が止まった。  真っ暗闇のキッチンから物音がする。  しかも、ここの照明は付けっぱなしだったはずなのに。  この部屋を訪れる女の子は、両手で足りないくらいいるけれど、今日はその中の誰とも約束を交わしていない。 「⋯⋯祐也、お風呂から出たの?」   女の声だ。  恐る恐る、声のする方へ目を凝らす。  だが、暗すぎて顔がよく分からない。  手探りでリビングの電気を付けると、そこで笑顔を見せていたのは見知らぬ女だった。  陶器のように白くなめらかな素肌に、シルクのナイトガウンだけをゆるく羽織っていた。手にしていたグラスの中の炭酸が、シュワシュワと勢い良く音を立てている。  しかも、どことなく、『恋ベス』のヒロイン、ミノリンに雰囲気が似ていた。 
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