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すると突然、視界が遮られ、彼女が唇を優しく重ねてきた。それから、長く、ねっとりとした唇で絡みついてくる。
どうやら相性は悪くなさそうだ。その妖艶な唇に刺激され、反射的に彼女を押し倒す。
こちらを誘うような艶っぽい視線で微笑む彼女の首筋に顔をしずめた瞬間に、俺の欲望が動きを止めた。
――彼女の香りに覚えがある。
バニラのような甘ったるい香り。
目を閉じ、その記憶をたどる。
「⋯⋯どうしたの? 祐也」
――それに、この声。いや、まさか。
「君は⋯⋯誰?」
「祐也。今日、おかしいよ」
「おかしいのは、君じゃないのか⋯⋯」
みるみる、彼女の表情が歪む。
「⋯⋯どうして、私じゃダメなの? こんなに愛してるのに。顔もミノリンに似せて整形して、あなた好みにしたのに。雨宮 渚なんて、知名度だけが目的でしょ。祐也の良さを知らない女なんかに、絶対渡さない」
そう言うと、不敵な笑みを見せた。
「もしかして、夢の中の⋯⋯」
「よかった。ようやく気付いてくれたんだね、私のこと」
「いや、なんで⋯⋯」
「それはもちろん、あなたを愛してるからに決まってるじゃない――」
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