擬似恋愛中毒

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 後輩の子が涙声で話した内容は、我が耳を疑うようなものだった。  彼女、山下 祥子さんは、昨晩自宅で亡くなっているところを発見されたそうだ。  無断欠勤と連絡が繋がらないことを不審に思った後輩が、彼女の自宅マンションを訪ねたところ、インターフォンにも反応がなく、管理会社に鍵を開けてもらうと、リビングのソファーに横たわる彼女を見つけたそうだ。  死後三日も経っていたという。  死因は、過労だった。  何度も夢の中で見た、彼女の帰宅時の光景が、最後の時だったのだろう。  『恋ベス』の映画公開を心待ちにしていた彼女の強い想いが、彼女と俺が対面する場面を夢として見せていたのだろうか。  それにしても、なぜ、あの夢を、俺が見たのか――。  その意味をしばらく考えていた。  彼女はただ自分の存在を、長年ファンだった俺に、認知してもらいたかったのか。  いや、もしかしたら、俺が、彼女の目を通して景色を見ることで、ファンやスタッフや世間の声を直接聞いて、この先の仕事に対する向き合い方を、改めて考えさせようとしていたとしたら。  自分の愚かさに気付くようにと。  真のファンだった彼女は、俺のことを本気で心配して。  だが、彼女の本当の意図を確認することは、もう叶わない。でもそう思いたかった。
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