擬似恋愛中毒

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「⋯⋯祥子先輩。私、この会社に入ろうって最初に決めた理由、実を言うと、ミーハー心からだったんです。芸能人に会えるかなぁとか。でも、この仕事を通して、一つの映画をこんなに沢山の人たちが想いを込めて作っているんだと知ったら、その想いを一人でも多くの人に伝えなきゃって思えたんです」 「そっか。その気持ち、これからもずっと忘れないようにね」 「でも現場で、憧れの俳優さんに会った時は、やっぱりテンション上がってソワソワしちゃいますよね~」 「それでもプロに徹しなさいよ」 「祥子先輩は、好きな俳優さんの映画に関わったことないんですか~?」 「えっ? あぁ⋯⋯」  目線が、手に持っていた今回の映画のフライヤーに落とされる。 「いつもの先輩らしくない。ずいぶん歯切れ悪いですね。えっ、もしかして先輩⋯⋯」 「なによ⋯⋯」 「浅霧 祐也のファンだったりします?」 「えっ!」 「やっぱり~。その顔は図星ですね。でも、浅霧 祐也って、テレビでは爽やかなイケメン俳優のイメージだけど、裏では女たらしで性格悪いって噂もありますよね。この間、クイズ番組に出てたの見たんですけど、やっぱりワガママそうに見えましたけどね」 「そんなことないわよ!」  俳優という仕事がイメージ商売だからこそ、そのイメージ戦略をうまく使えば、裏で何をしていても、世間的な好感度は下がらないと、ずっと思っていた。  ”俳優・浅霧 祐也”という商品の好感度を意図的にコントロールして商売をするのが、俺たちの仕事なんだから。  でも、この夢を何度か見るうちに、それでいいのか、と考えるようにもなっていた。「お前は傲慢になっているんじゃないか?」と夢に言われているように思えたからだ。
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