どうしてこうなった。

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「メルフィー嬢がそうして手筈を整えているというのに、サーベル始め貴様らは、愚かにも公衆の面前で婚約破棄などと醜聞を撒き散らそうとしていたな? だからメルフィー嬢はゾネス、貴様に止めるよう訴えていたはずだ」  名指しされたゾネスは肩を震わせる。陛下のお言葉に覚えがあるのだろう。 「だが、貴様もそこな小娘に目が眩み異母とはいえ姉の言葉を蔑ろにした。そうしてあの日、事は起こった。メルフィー嬢はあのような暴挙が行われない事を信じつつも、万が一を考えて事前に大目に見るよう手筈を整えていた。余はさすがにサーベルがそこまでうつけだと思っていなかったからな、メルフィー嬢に、息子が信用出来ぬか! と声を荒げて叱り飛ばした。それでもメルフィー嬢は手筈を整えた。何故か解るか? サーベル」 「い、いえ」 「メルフィー嬢はお前だけを一途に直向きに想っていたからだ。全てお前のためだけだった」  サーベル殿下は呆然としていた。 「メルフィー嬢は、万が一、お前が愚かな事をした場合、王位継承権を剥奪される可能性を考えていた。実際、余はあの醜聞でそうするつもりだった。だが、メルフィー嬢はその場合、お前の弟である第二王子が繰り上がりで王太子になる。まだ学園に入学もしていない第二王子にその責務は重い。第三王子は10歳にもならない、と言ってな。サーベルは恋に溺れているが、学園の成績は優秀。公務も執務も問題が無い。だから考え直して欲しい。そう訴えられた」 「メル、フィー」  サーベル殿下がその名を呼ぶ。 「お前にその名を呼ぶ権利は無い、と言っている。……メルフィー嬢はその後、先ずは父である公爵の怒りを逸らすために、ゾネスを実母の元にやった。あのまま公爵家に居たならゾネスの首は胴体と離れていただろうよ。娘に冤罪を着せて貶めたお前達を許しはしない、と決めていたからな。 それをメルフィー嬢は理解していた。だからウィリティナとデイルを助けるために、ウィリティナを急ぎサーベルの婚約者候補に仕立て上げた。デイルを自分の婚約者候補として迎えてどちらの男爵領も潰れないように動いた。 またブルトンとゴレットの婚約者にも手を回して2人を許す方向でお前達が実家から縁を切られないよう働きかけた。……解るか? お前達の未来なぞ潰してもおかしくないメルフィー嬢が、お前達の未来を繋いだのだ。何故ならお前達はサーベルと親しかったからだ。ただそれだけだった」  喉が、渇く。  何も言葉が出て来ない。  思考が空転する。 「メルフィー嬢は、公務と執務を行うだけの妻でも良いから、と待っていた。ウィリティナ、その方が王妃に迎えられてもおかしくない程度の教育を修めるのを、な。1年そなたが耐えれば、サーベルと婚姻出来た。その後メルフィー嬢を公務と執務を行う側妃として迎え入れる予定だった。だが、貴様は教育が辛くて逃げ出した。言っておくがな、王族教育を受けていたメルフィー嬢も王太子妃教育の辛さに良く泣いておったぞ」  あの、悪女、が、泣く……? 「それでもサーベルの為に頑張って耐えていた。サーベルが自分を愛してくれないと理解していても、な。貴様はサーベルに愛された女なのに耐えられないと逃げ出した。その結果がコレだ」  ウィリティナが逃げた結果が、悪女の死……? そんなバカな事があってたまるか。
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