どうしてこうなった。

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「まぁ今回は大目に見る。元々其方とメルフィー嬢の婚約は解消されていたからな。メルフィー嬢に悪意などぶつけおってからに。感謝こそすれ、悪意など許される事では無いのだぞ」  国王陛下が溜め息を吐き出したけれど、何故悪女に感謝などしなくてはならないのか、と俺は不満だし、多分皆不満だと思う。 「父上、それは」 「黙れ。……それからそこの娘」 「は、はいっ」 「メルフィー嬢に虐められていた、と訴えていたようだが、何の証拠も無いのに男爵家の娘が公爵令嬢に対して、そのような事が言える、と思っているのか」  国王陛下の諭すような言い方とは裏腹にビリビリと身体が痺れるような威圧感が襲う。ウィリティナのようなか弱い子では可哀想だ。やめてほしい。 「あ、あああああの、その」  ウィリティナは威圧感に押されて言葉を真面に紡げない。陛下、どうかやめてくれないだろうか。 「父上っ。ウィリティナはか弱い令嬢です。メルフィー……嬢のように強くないのでそのような事はおやめください」  サーベル殿下の訴えに、俺もだが、ウィリティナもホッとしたような表情になった。 「サーベル」 「はっ」 「貴様は、本当に表面だけしか見ておらなかったのだな。何一つ、メルフィー嬢の事を理解していなかったのだな」  国王陛下は呆れたのか、それとも別の意味なのか、溜め息を大きく吐き出してそう言った。……一体、あの悪女がなんだと言うのか。 「父上、それは」 「お前の目から見たメルフィー嬢が、強いだけなら、何も見ていない愚か者という事を、お前は暴露しているのと同じだと言っている」 「そんなっ」 「お前は何も考えずに余の言う事に反論しているな。そこまでうつけになったか?」  国王陛下がサーベル殿下の反論を封じ込める。一体、陛下は何を仰りたいのだろう。 「父上、私は考えた末の発言ですっ」 「だとすれば、お前の目は節穴だな。見ているのは表面のみ。上辺だけ見て、見たと良い気になっている。そこの男爵家の娘が本当にメルフィー嬢に虐められていたのか、お前自身の目で調べよ。その調べの結果次第で、お前の今後を考える。 言っておくが、お前の周りにいる側近にも手伝わせない。そこの娘から虐めを受けたという日時・場所を手がかりに、証人を見つけ出し、誰もが納得する証拠を見せよ。余自ら学園の学生達に嘘偽りなくお前に申せ、という書面を認めるから、その書面を持って証人達の証言をもって証拠として差し出しても構わん」 「私、一人で?」 「なんだ。ああ、1人の令嬢を寄って集って公衆の面前で貶めていたな。人を集めないと何も出来ぬと申すか」  学園内は広いのに手分けも出来ないなんて、と思っていた俺は陛下の言葉に不満を封じた。確かに悪女とはいえ、1人の女に対して何人もの男がやる事ではない、と思う。あの時はそれが当然だったと思うが、今思えば、あれは数の暴力とも言えた。サーベル殿下も何も言えないらしく了承している。  ウィリティナと俺達は各家で謹慎の身になってしまった。たとえ悪女がどれだけ悪くても、公爵家の令嬢で、元王太子の婚約者を公衆の面前で貶めた事は、陛下の顔に泥を塗ったようなもの。粛々と従うしかなかった。処罰は、悪女がウィリティナを虐めていた証拠が出たら決まるのかもしれない。
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