第九章 イスラムの敵イーリヤ

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 東の山林で小さな火災が起こる。一つ二つではない、次々に白い煙が細く立ち昇る。何かが起きている。 「ドローンが砲兵陣地を攻撃しています!」  双眼鏡を手にしている観測兵が視認したことを無線で知らせる。ストーン中尉は防戦一方でそれどころではない。 「アルメニアを守るために遠路やって来られたルワンダ軍の勇士よ、私はブカニャン退役上級大将だ。ステパナケルトの盾は貴軍への後方支援を行う」 「ルワンダ派遣軍司令官イーリヤ中将です。ブカニャン上級大将の助力に最大限の感謝を示させていただきます」 「貴官とは後程じっくりと語り合いたいものだ」 「どうぞ小僧へご教示の程を」  サルミエ少佐が手配した補充ドローンを受け取ったバスター大尉が、戦地真っ只中へ飛ばすわけにもいかず思案していたところでステパナケルトの盾を思い出した。そちらへ空輸した後に、ブカニャン退役上級大将らは自力で設定を行い、敵を見付けると空爆や自爆を行った。  砲撃が一気に弱まり、南西部の防衛も目途がつく。仮総司令部への奇襲も無いと解れば後は前へ出るのみだ。 「戦闘団司令より下命。ドゥリー大尉はストーン中尉と共に南西部から敵を突破しろ!」 「ダコール コンバットコマンダン!」 「ハマダ大尉は北東からビダの左袖をかすめて進出だ!」 「イエス ルーテナントカーネル!」  中央でビダとドラミニが踏ん張っているうちに、両翼を突出させて包囲殲滅を図る。グイグイと地歩を得て、戦闘車両が南東部へ食い込んでいく。
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