第九章 イスラムの敵イーリヤ

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 ハマダ大尉の歩兵支援中隊、ハンヴィーM1097を六両とM-ATVを二両抱えている。このハンヴィーは対空仕様になっている、代わに対地ミサイルはついていない。そのハンヴィーが突如爆発した。 「どうした!」  ハマダ大尉が飛び散った車両を見て眉を寄せる、地雷を踏んだわけでもなさそうだ。 「せ、戦車です!」  なんと見つからなかったT-72がこんな場所に隠れていた。部隊の火力は組み合わせが悪く、スティンガーと十二・七ミリ、四十ミリグレネードしか持ち合わせていない。いくら撃ちっぱなしでスティンガーを使っても、正面装甲を抜くことは出来ない。 「盆地北東部にT-72出現! 火力が不足し対抗不能!」  機銃を連射しながら装填が終わって二度目の主砲が発射された。ハンヴィーのタイヤが吹き飛んで、ひっくり返る。 「射界から外れろ、散開するんだ!」  仕方なく前進を取りやめて、デコボコの地形を利用して射線から外れるようにする。すると急にT-72が静かになった。理由は簡単、こいつは俯角が取りづらく射線が極めて狭いのだ。逃げ回れば被弾する可能性は減るが、包囲が出来なければ中央のビダらが抜かれてしまう恐れがあった。  一か八かで駆け抜けることも出来るが、それでは被害が立て続けに出てしまう。にっちもさっちもいかない、陽が暮れて来る、もうすぐ雲がかかった空も暗くなるだろう。 「トリスタン大尉着陣! T-72の傍から離れろ! 十、九、八……発射!」 「中隊緊急退避!」
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