第九章 イスラムの敵イーリヤ

10/12
306人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
 アルメニアは実効支配していた領地の多くを失い、ナゴルノカラバフとその北東の街シュシャだけを残して全てを返還することで合意。五年後に破棄が無ければ自動更新ということで平和維持軍を受け入れる。双方深い傷跡を残して戦争は終了した。  敗北協定を結んだとしてアルメニアの閣僚は多数が辞任に追い込まれてしまう。そんな中、少数でステパナケルトを守り、シュシャの奪還を阻止したブカニャン退役上級大将が英雄として祭り上げられる。辞任のせいで空席になってしまった大臣ポストに暫定的に収まると、次期内閣で国防大臣に就任するとの声が聞こえてきた。  ロシアへの報告で、ドレコフ少将の類まれなる支援で戦争が終結した、そのように持ち上げるとクレムリンも形式上ドレコフ少将を遇しないわけには行かず、中将に昇進しカフカーズ軍管区司令官に任官した。  ルワンダ派遣軍は原発を防衛した功績を表彰される。だがラチン回廊での戦いで治安維持を行ったのはベルリンだという形になっていたので触れられることが無い。真実を知る大統領が与えることが出来る勲章だけを携えて、島はルワンダへ戻ることになる。  キガリ国際空港で待っていたのはニャンザ警視長だった。満面の笑顔で大統領府への道を完全封鎖して先導する。一般市民にとっては迷惑でしかないが、沿道で国旗やクァトロの軍旗を振っている者が多かった。  ――隠していたわけじゃないが、俺が返る日時を知っていて動員を掛けた奴がいるな。  隣に座っているエーン大佐をチラッと見るが無反応だ。まあどうでもいい、そう思いなおして前を向く。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!