ミスター・グレイ

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それでは、お教えしましょう。 私たち吸血鬼は、一見してただの人と変わりません。コウモリの翼が生えている? 耳が尖っている? いいえ。そんなことはございません。 二本の犬歯が尖っている? 確かに人と比べれば長く鋭く尖っているのかもしれませんね。しかし、人の中にもそういう方はいらっしゃいます。 ほら。これでは人混みの中に紛れてしまえば気づかれないでしょう? 吸血鬼とはそういう種族なのです。 しかし、中を開けてみれば違いは歴然。 先ほどあなたが見たように、素手で獲物を狩ることなど朝飯前。お友だちだった生き物がどうなったか、ご存知でしょう? 握力も、脚力も、視力も聴力も。全てお前たち人とは比べものにならないことを覚えておくがいい。 他種族との意思疏通が可能かは、ご自由にお考えください。 そうですね。全ての吸血鬼が、私のようにあなたの前に座ってお茶をお出しするとは限りません。 人に歩み寄るかは、その吸血鬼次第。 少なくとも、彼はあなた方を信用しないでしょうけど。 人と吸血鬼を見分ける方法。 それは、目の色の変化です。 私たち吸血鬼は、一定条件下で瞳の色を赤く変化させます。その条件は個々で様々。 そう。もとから「赤い目」を持って産まれた吸血鬼などいないのでございます。 いえ、例外はあるのでしょうが。例えば、そうですね。「生きている」「心臓が動いている」「時間を刻んでいる」などの条件であれば、生まれた瞬間から目も赤いのでしょう。 まあ、そんな吸血鬼には出会ったことがありませんが。 私? 私は、涙を流すと目が赤くなります。 内緒でございますよ? では、件の彼はというと「怒る」と目が赤くなるとのこと。 話は冒頭に戻るのですが、彼の性格は怒りん坊。つまり怒りやすいのです。 私の記憶の中のあの方は、どんなときでも大抵は目が真っ赤。いつも怒ってらしゃったのです。ただ、ご友人らとご一緒の時はその赤色も鳴りを潜めていたような。
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