やさしい闇と宇宙船

10/12
前へ
/12ページ
次へ
川の字に並べられた布団が3つ。 私は、寝室に使っている和室の電気を消した。 「たっくん。えっちゃん、おいでー。寝るよ」 猫のぬいぐるみを持って、トタトタ走ってやってくる、えっちゃん。 「ねえ、ねえ、今日は宇宙船に乗ろうよ」 「うん、いいわよ。じゃ入って入って」 「やったー」 隣の布団で、一人寝る準備をしていたお兄ちゃんの、たっくん。 「えー、俺、もういいよ。俺、足出ちゃうもん」 「そう言わないで、今日は特別」 「しょうがないなー。じゃ、おれが船長やるよ」 「えー、私が、やる」えっちゃんが慌てて言う。 「じゃ、今日は船長二人ね。さ、入って入って」   布団の中、3人キチキチに入る。 「よし確認作業OK。シートベルトを閉めてください」 「ガチャ、うん。大丈夫」 「それでは出発します」 みんなでカウントダウンをする。 「10、9、8、7、6」 たっくんも、えっちゃんも、私も、 「5、4、3、2、1、0」 そして、お父さんも、小さな私も、みんなで声を合わせる。 「発射!!」 ……一緒に飛ぶ!みんな一緒に飛ぶ! 「ゴーーー、ゴーーー、ゴーーー」と言って私は布団が揺らす。 「さー雲の中を飛んでいくよ」 「大気圏突入だー」 激しく揺らす。 「あわわわあわあ」 えっちゃんが、猫のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。 「ほら、俺、足が、足が出ちゃうよ」 たっくんが慌てて布団を掴む。 「ドドドドドドド、ガタガタガタガタ、ゴンゴンゴンゴン、ブチュブチュブチュブチュ、バキバキバキバキバキ……」 「あわわわあわあ」 「バキバキって、やばいやばい」 「ガンガンガンガン、ドンドンドンドンドンドンドンドン、ドン、、ドン、、、ドン」 やがて静かになり 「ピューーーーー、チン。宇宙に到着です」 と言って、私は一仕事をやり終えた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加