やさしい闇と宇宙船

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まずは、出発前に計器の点検をお父さんがする。 小さかった私は計器の意味が分かってなかったけど、「ピッ、速度計よし。ピッ、燃料計よし」ってする確認作業がやっぱり出発前には必ず必要だった。 宇宙船を打ち上げるって、そんな簡単な事じゃないんだと思う。 私は、その間、たまに布団、、、じゃないよね。宇宙船に隙間を開けて、薄暗い部屋の光を少し見てたりしていた。外と中を区切っているのは、こんな頼りない壁一枚。なんだか不安になる。 「よし確認作業OK。シートベルトを閉めてください」 「ガチャ、うん。大丈夫」 「それでは出発します」 私は息を吸った。カウントダウンはいつからか私の役目になっていた。これを始めた頃は、まだ10も数えられなかったのに。 「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」 二人で声を合わせる。 「発射!!」 …… 飛ぶ! 「ゴーーー、ゴーーー、ゴーーー」ってお父さんが言いながら布団が揺れる。 「さー雲の中を飛んでいくぞ」 私は、宇宙船が捲れないように、しっかりと端っこを持って我慢する。 やがて宇宙船は大気圏に突入する。この時の私はまだ大気圏って何か知らなかったから、てっきり地球と宇宙の間には隕石みたいな塊がゴロゴロゴロゴロ転がっているのかと思っていた。 「大気圏突入だー」 激しく揺れる。 「あわわわあわあ」 私は、壊れるー。壊れちゃう〜。って思いながら必死で宇宙船を抑えた。ヤバイ、大気圏ってとにかくヤバイ場所なのだ。下手をすると宇宙船はここで壊れてしまう。 大気圏の意味は知らなかったけど、あの頃の私にとって、とにかくヤバくて面白いのだけは確かだった。 「ドドドドドドド、ガタガタガタガタ、ゴンゴンゴンゴン、ブチュブチュブチュブチュ、バキバキバキバキバキ……」 ……今思うと、何の音だそれはって突っ込みたくなるもなる。 「あわわわあわあ、やりすぎやりすぎ、壊れるー」 「ガンガンガンガン、ドンドンドンドンドンドンドンドン、ドン、、ドン、、、ドン」 やがて静かになり 「ピューーーーー、チン。宇宙に到着です」 と電子レンジが終わったかのように宇宙に到着する。 「着いたー」 私はホッと一息ついてグッタリとする。
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