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物心つく前にお母さんを亡くした私は、こうやってお父さんに育てられた。
いつも、家にはおじいちゃんと、おばあちゃんもいたから寂しくはなかったけど、でも、たまに、本当にたまにだけど、フッとどうしようもなく心細い気持ちになる時があった。
暗い光の届かない深い深い闇、その深淵に立っていた。引き摺り込まれる。そんな感覚に支配される。だけど、不思議と怖くはなかった。そこには、ただ虚無の闇だけが広がっていた。誰もいない、そして私も消えていくその虚無の中で、静かに涙がポロポロこぼれ落ちた。
夜、布団の中でそうなる事が多かった。だからかな、宇宙船ゴッコは良くしてもらった。そうすると、闇が暖かく居心地いいものに変わる。やさしい闇になる。
この頃、お父さんは仕事を手取りの良い土木関連の仕事に変え帰りが遅かったし、疲れていたけど、いつも寝る前に、宇宙船ゴッコをしてくれた。
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