これから自殺しようとしている君へのうた

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これから自殺しようとしている君へのうた

 私はとてもチッポケでノーマルな人間です。ただの、それだけの、人です。  少し違うのは、何だか自分はカラッポらしいということ。  友達なんかいらないし、流行とか、ファッション、(うるさ)いテレビも嫌い。  映画も音楽もアイドルも嘘くさく思えて、(ほとん)どのものがどうだっていい。  美味しい料理も甘いデザートも、口の中で砂になるし、ゲームや漫画は子供っぽいだけ。  誰にも興味が無いし、何にも執着しない。  いつか笑うこともなくなって、そして泣くことも忘れてしまったみたい。  私の感情が石ころになって、坂道を転がり落ちていくのを見たとき、あえて探しに行こうなんて思わなかった。  だから誰も好きになれないのは当然で、だから誰も好きじゃない。  誰が生きようが死のうが、知ったことか。 3347d1ee-4056-42a4-bc28-a22fac77b9a7  だけどね。我ながら笑っちゃう話なんだけど、君と擦れ違ったあの日のこと。  私は君の後ろ髪が風に(なび)いて空気に踊ったのを目にしただけで、何かもう世界が終わった気がしたんだ。  終われば次は新しい世界の始まりだ。  奇跡って言葉を用意したヤツに初めて感謝したよ。  君がどこの誰かなんて知らないけど、そしてもう会うこともないんだろうけど、その一瞬で私の血も肉も夢も感情も生も情熱も、無くしたものすべてを与えて去っていったんだから。  こんな人間が本当にいるんだ。擦れ違っただけで、何もかも与えてくれる向日葵(ひまわり)みたいな人が。  まったく、まいったぜ。こんなことされたら、私は死ぬまで生きるしかないじゃないか。  君は私のために生きてるわけではないけどさ。私だって君のためには生きないけどさ。  それでもこんな一瞬の永遠があるなんて、学校では教えてくれなかったなぁ。
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