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「おれから来てやったんだから、満足させてくれんだろうな」  景の顔を眇めた目で見下すと、その口角が引きあがる。 「誰にモノ言ってんだよ」  そう言うと、景は侑里の頭を引き寄せて、キスをした。さっきよりも深くまで舌が入ってくる。奥歯を撫でられて、背中がぞくりと疼く。 「ふぁっ……んっ、景……」  口の中から溶かされるような感覚が心地よくて侑里は景に抱きつく。景はそんな侑里のシャツのボタンを開け、今度は胸に舌を寄せた。ざらついたそれで舐められれば、一度でピンク色の粒が赤くふっくらとして、景の舌先を更に求める。 「はっ……ん」  その甘い快感を受け止めようと侑里が背を逸らす。そんな侑里の背中に腕を廻し、景が侑里を抱きしめる。 「こっち、苦しいだろ?」  景が侑里のパンツのボタンを外す。ジッパーを下ろされる感覚に、侑里は慌てて景の手を掴んだ。  酔って気持ちが大きくなっていても、やっぱりダメだ――好きでもないやつの相手をこれ以上景にさせられない。 「触られるのが嫌なら自分でするか?」 「……へ?」 「いいよ。見ててやる」 「な、なんでそうなるんだよ」 「できない?」  にっと楽しそうに笑う景の顔に、侑里はカチンときた。素面ならこんな売り言葉を買うことなんてないのだが、さっきも言ったように、今日の侑里は飲みすぎている。 「……いよ」 「ん?」 「いいよって言ったの! よく見とけよ」  侑里はそっと下着から自分の中心を取り出すと両手でそれを扱きはじめた。ゆっくりと根元から手を動かしていくと、熱い視線を感じて侑里が顔を上げる。ソファの背もたれに両腕を預けてゆったりともたれている景が不敵に笑う。侑里は唇を噛んでそれから視線を逸らすと再び手を動かした。  景はどんなふうにしてくれるだろう、と目を閉じる。いつも優しくて、でもちゃんと欲しい所に指が伸びて――ああ、全然覚えてない。心地よさに溺れて、呼吸するだけで精一杯だった。  好きで、大好きで……自分に触れてくれることがただ嬉しくて、それだけできっといけてたんだ。  こんな自分の手でなんて、いけるはずないんだ。 「……侑里?」  突然手を止めた侑里に景が声を掛ける。 「できない……一人じゃいけない……」  侑里はそう言うと、溢れる涙をその感情のままに流した。そんな侑里に景の手が伸びる。 「さっきまで偉そうにしてたと思ったら急に泣き出して……ホント、手の掛かる酔っ払いだよ」  景の言葉に、お前のせいだと反論したかった。けれど唇は景のそれに塞がれて言葉にすることは出来なかった。 「んっ、はっ、け、い……」 「あんまり可愛いことしてんなよ」  景はそう言うと、侑里の体をソファに押し倒した。貪るようにキスをしながら、侑里の中心を甘く慰めてくれる。 「こ…れ……」  これだと思った。景がくれる優しくて激しくて呼吸するだけで精一杯の快感。今はこれが欲しくて堪らなかった。 「気持ち良さそうだな」  景が優しく、でも少しいやらしく微笑む。昔と同じ、その表情が好きだった。求められているのが分かるから―― 「ん……」  侑里は心の中で何度もごめんと繰り返しながら、それでも景のくれる刺激を全て甘受しようと目を閉じた。
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