0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
パンダの被害者には共通点があった。
それは、全員が警察によって検挙されていなかった犯罪者であるということ。
この世界には警察の手が届かない犯罪が溢れている。教師の目を盗んで行われるいじめ、ストーカー、盗撮、恐喝、拉致、エトセトラ。
そういう、曖昧に呑み込まれてしまいかねない行為を断罪してくれる、路地裏のダークヒーロー。
それが、パンダであった。
名前の由来はシンプルだ。いつも同じ、手作りのパンダ覆面を被っているから。
それ以外にも、武器にしている鉄パイプを笹の色にカラーリングしている、みたいな細かい情報もちらほら浮かんではくるが、結局のところ誰ひとりとしてその実態は知らない。知らないからこそ、それぞれの頭の中でパンダというヒーローの存在は肥大化し続けていた。
その延長線上、パンダの英雄感とアングラ感の分岐した先にあるのが、あいつらのような、パンダ信者と呼ばれる暴漢である。要は仮面ライダーのコスプレをしたショッカーのようなもので、パンダのカリスマ性を借りて自分たちを大きく見せようとしている馬鹿たちだ。
パンダ信者が行っているのは、自分たちの気に入らない人間に対する私刑行為である。中には金銭を奪うグループもいるらしい。おそらくあのサラリーマンも、ひとしきりの暴力が終われば身ぐるみを剥がされて捨てられるのだろう。
そんな馬鹿たちの頭数が増えてきた頃、唐突にパンダについての情報が途絶えた。なんでも、こんな騒動の引き金になってしまったことへの重圧に耐え切れずヒーローを引退したらしい。
最初のコメントを投稿しよう!