からっぽ

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からっぽ

 何のための日々だっただろう。  いつからか彼氏と会うたびに、日に日にけんかになって、付き合った当初に充分に抱えていたはずの愛情が少しずつマイナスされ、弱くなっていく自分に、この痛みは未来で明るく笑って彼と過ごせるようになるための試練なんだよと言い聞かせ、彼と過ごした五年分の悲しみを心に押し込めながら、それでも彼との明るい未来のために頑張りつづけた、二十六才の今日。  私は人生で最大の悲鳴を心のなかであげた。  だけど、誰にも見つからないようにして、その日は広告プランナーの仕事をいつものようにこなした。
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