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2.小さな光
船が止まったのを確認すると、シンは隠れていた貨物室から駆け出した。幸いにも船員は多く知らない顔がいても誰も気にしないようだった。
目の前はシンの村とは比べものにならないほどに大きな町だった。沢山の屋台が並び、その店先には提灯が連なっている。それは祭りの時の聖火よりも明るかった。
遂にやってきたのだ。魔法の光を探す一歩を踏み出したのだ。
そんな感慨を胸にシンはふらふらと人の波に乗って、市の中に吸い込まれていく。
船が動き出した時には昂ぶった気をどうしようかと思っていたが、もはやそれどころではなかった。実のところ、シンは丸二日何も口にしていなかった。見つかってはまずいと夜でも警戒していたため、睡眠もほとんど取っていない。
せめて何か口にしないと。
屋台には穀物だけでなく、木の実や肉も売っているようだった。商品がよく見えるように店の中まで目一杯提灯がぶら下げられていて、店先で店主が声を上げている。ここではシンの村ほど火種が貴重ではないのかもしれない。
見慣れないものも多く目移りしていると、腰の辺りに何かがぶつかった。
見ると、10才前後の少女である。
「ごめんなさい!」
少女が一歩下がって顔を上げる、と驚いたように目を見開いた。
「まあ、あなたとても顔色が悪いわ!」
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