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丸二日何も口にしていないことを説明すると彼女のペースに乗せられ、気が付けば少女の家でごちそうになっていた。少女はメイと名乗った
「両親は市でお店を出しているの。死にそうな人を放っておかなくちゃいけないほど、苦しい生活は送ってないわ。」
だから気にしないでと微笑む。
確かにメイの家はシンの村の家々よりも一回りほど大きく頑丈そうに見えた。市の様子からもこの町が大きいだけでなく豊かで栄えていることは間違いなさそうだった。石造りの家も多く、森も遠いため獣の心配も少なそうに見える。
「シンはこの町の外から来たのよね?」
見慣れないものに関心があるのはお互い様のようだった。
「そうだよ!僕の村は海の向こうの島にあるんだ。」
村の話から始まり、生活、家族の話を細かく聞かれ、最後にメイは心底不思議そうな顔で質問してきた。
「シンはどうして村を出たの?」
「魔法の光を探すためさ!」
シンは迷うことなく真っ直ぐに答えた。
「…魔法の光?」
ずいぶんと長く話していたため、外では鐘が鳴り始めていた。もうすぐ夜が来る。
「そうだよ!メイは知ってる?昔人間は魔法の光を使って、もっと幸せな生活を送ってたんだ!だから、僕は―」
「…魔法の光を手に入れたら、また神さまに罰せられるんじゃないの?」
さっきまで明るく笑っていたメイは俯いて机の一点を見つめていた。
「そんなことない!魔法の光があれば…!」
思わず大声を上げて、シンは言葉を詰らせた。
メイの表情を伺うことはできないが、その声には明らかに拒絶が含まれていた。
この世界の人はみんな神さまを信じ、恐れている。だから、理解されないことは分かっていたはずだ。
早く魔法の光を手に入れて、救わないと。メイも救われるべき人だ。
「もうすぐ、お父さんとお母さんが帰ってくるの。それまでに出て行って。」
押し殺したような声でメイが言う。
テーブルの上の炎が二人の影をちらちらと揺らしている。
シンは悲しさを紛らわせるために大きく息を吸った。
「最後に一つだけ、魔法の光について何か知っていたら教えて欲しい。」
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