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4.魔法の光
男は名乗らなかった。だからシンも名乗ることはしなかった。
手頃な岩に腰掛けると、男は懐から食べ物と水を取り出し、シンに差し出した。
「とにかく食べなよ。」
死を覚悟していた自分が生きていることに、涙が出そうになった。
「…ありがとうございます。」
シンが食べている間、男は暗闇を見つめ続けていた。そのまなざしは確かで、その先に何かが見えているかのようだった。
「あなたは…?」
「君の探している不老不死の男さ。魔法の光を見てみたいんだろう?」
何故自分が男を捜し、魔法の光を求めていることを知っているのか、と言うことを初めに聞くべきなのだろう。だが、シンの頭の中はそれどころではなかった。
「魔法の光を見せてくれるんですか?」
「もちろん、君が望むなら。」
余りにもあっけない返事だった。
村を飛び出して2週間足らずでまさか魔法の光にたどり着けるなどとは思ってもいなかった。
やはり僕は間違ってなんかいない。
男はおもむろにコートのポケットから筒を取り出し、シンの前で仰々しく手を開いた。
「さあ、見せてあげよう!」
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