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0.今日も僕らは光を探している。
僕らの知らないずっと昔。
世界は光に溢れていた。
空には大きな光があって、昼には松明が要らないほどに明るかった。
いつしか、人々は光に取り憑かれ、炎よりももっと明るい光を求めるようになった。
それは、一日中暗闇を照らしどんな小さな影も消し去ってしまう、魔法の光。
暮らしはどんなに豊かだったのだろう。僕らには想像もつかない。
だけど、それは神さまの怒りに触れた。
人々が光を操ることを神さまは良しとしなかった。
そうして、暗黒の時代が訪れる。
空は一日中大きな雲に覆われ、魔法の光はパタリと使えなくなってしまった。
太陽と呼ばれていた天上の光もなくなり、世界中で飢饉が起きた。
暗黒時代以前の食べ物は、光なしでは育たない。
沢山の人が死んだ。
食べ物がなくて、飢えた人。
それまで信じていた魔法の光が使えなくなり、絶望した人。
食べ物を巡る争いに巻き込まれた人。
それでも人間は種として滅びなかった。
だから僕らがいる。
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