第1話

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第1話

 始まりはいつものように城崎との言い合いから始まった。城崎とは、中学の同級生で犬猿の仲。席は隣で、いつも喧嘩ばかりしていた。去年も同じクラスだった。 「お前こんな問題も分かんねぇの?」 「あんたこそ、これ何?私の教科書に落書きしないでよ!」 「授業中に寝るやつが悪いんですー。寝てるから公式覚えらんねぇんだよ。」  言い返す言葉が無い。そんな私に対して、図星?図星ですかー?なんて煽ってくる始末。ムカつく。ほんとにこいつムカつく。  城崎斗亜。中二にしては身長170センチあり、運動神経がよく頭もいい。目鼻立ちは整っており、そこそこイケメンだとは思っている。が、性格がくそ悪い。大っ嫌いな野郎だ。  でも、腑に落ちないことに、この人が私の好きな人だったりするのだ。本当に腑に落ちない。喧嘩しながらも、かっこいいなんて思ってしまう。  「まぁ、まぁ。2人とも喧嘩してないで次移動だから遅れるよ!」 いつも通りの喧嘩に、クラスメイト達はまた始まった。とでも言いたげな顔をして教室を出ていく。 「あ、やべ。ほら成瀬!早く行くぞ!」 「え、待ってよ!!」 城崎に急かされ、私は教科書を持って教室を後にした。  「お前、もし次の授業でも寝てたら知らねーからな?」 「はぁ!?寝ないし!バカにしないでよ!ほんとに!」 そんな言い合いをして、階段を降りている時だった。 「危ない!」 珍しく、城崎の焦る声と共に、私は見事に踏み外し、体が大きく下に揺れた。やばい。と思い振り返った。城崎は私の腰に腕を回し、思いっきり抱き上げた、その時だった。  私の体に電流が流れたのだ。なにこれ!?恐怖のあまり、思いっきり目を瞑った。  次に目を開けると、全く知らない光景が拡がっていた。中学よりも立派な建物たちに、大人っぽいのに制服を着た人達。  私はすぐに悟った。ここは、高校? 「さら?何ぼーっとしてるの?」 この人は…分かる。自然と名前が頭の中に浮かぶ。 「隆一。」
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