1390人が本棚に入れています
本棚に追加
私の話を聞き終えたアルは、涙でボロボロになった私を抱きしめて、あやすように背中を叩く。
「……また、子ども扱いする」
「……いつまでも、子どもならってずっと思ってた」
アルは背中を叩きながら優しい声でそう言った。
「そうなら、俺はずっとシアの保護者でいられるから」
身体を離したアルは私の濃いピンク色の髪を指先で掬い、そこに口付けを落とす。その流れるような動作がまるで小説のワンシーンのようで、視線が離せなくなった私に、アルはくくっと喉で笑った。
「いつまでも子どもだなんて、そんな事あるわけないのに。シアはもう、立派な大人なんだよね」
困ったなとアルは熱くなった私の頬に触れ、
「本当は今日、シアに"さよなら"を言うつもりだったんだけど、あんな風に言われちゃったら、シアのことはぐらかして国に帰れないな」
とそう言ったあと、
「助けて、もらおうかな。俺の聖女様に」
とても、綺麗に微笑んで私の額に口付けた。
「急に……へっ、あの?」
「シア、動揺し過ぎ」
おまじないじゃないよね、と挙動不審になる私を面白い生き物でも見るかのように笑ったアルは、
「とりあえず、魔力が欲しいなぁ。俺から呪い引き剥がすにも、その後俺がこの古術発動させるにも魔力ないと無理だし」
とそう言った。驚いて目を見開く私に、
「シア、解呪失敗したら、俺と一緒に死んでくれる?」
アルは真面目な顔をしてそう尋ねる。
「私を誰だと思っているの? 失敗させるわけないでしょ?」
アルとのこれから先が欲しいから。
抱きついた私は、アルの耳元で囁く。
「プランBにならなくて良かった」
「プランB?」
「魔ノ国乗っ取り計画。聖女から魔王にジョブチェンジしようかなって」
「…………うん、本当にやめて。マジで」
何で聖女様はこうも物騒なのと呆れた声でそう言ったアルは、黙ってプランB決行しないでくれて良かったよと私の頬を両手で引っ張りながらキラキラした笑顔でそう言った。
目が全然笑ってなくて、アルのお怒り具合が分かりちょっと怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!