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「一応訂正しておくが、我々悪魔は契約ありきで動いている。卑劣だ、残虐だと人間はあれこれ言うが、成立すべく忠実に行動しているだけだ。あんな無粋な真似をする下等者ばかりじゃない」
どうやらヘレパンツァーは、クローディアに憑いていた者のやり方に腹を立てたらしい。
悪魔として、彼も自分の立場にプライドと信念を持っている。そこはシャルロッテも同じだと思った。
「ええ、わかっているわ。ただ、成り行きとはいえ私と契約したからには付き合ってもらうわよ。地獄帝国の総監察官ヘレパンツァー殿」
仰々しく言えば、ヘレパンツアァーは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「それは正式じゃない。私の……俺の名前は『フェーゲフォイアー パンツァー』契約者なら覚えておけ」
“煉獄の戦車”という意味だ。しかしいまいちしっくりとこないシャルロッテは、自身で結論を導き出す。
「うーん。長いし言いにくいからパンターでいいかな?」
「この鳥頭。第一、それは……」
「シャルロッテ! この悪魔! クローディアをこんなふうにしたのも全部あなたのせいなんでしょう!」
すごい剣幕でペネロペがシャルロッテに歩み寄ってくる。ある意味、先ほどの悪魔よりも迫力のある表情だ。
クローディアの心配をひとしきりした後、ペネロペのやり場のない怒りはすべてシャルロッテに向けられた。
「血が繋がっていないのに、育ててやった恩を忘れて、本当にこの娘は」
「そこまでだ」
今にも食ってかかる勢いのペネロペを制したのはフィオンだった。
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