聖女にされそうなので逃亡します(※探さないでください)

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「パンター、どういうつもり!?」  攻撃をかわし、ベッドに座ったままのヘレパンツァーにシャルロッテが噛みつく。男は額に手を当て、大きく息を吐いた。 「それはこっちの台詞だ。普通、こんないい男が起きてすぐそばにいたら、なにも言わずにその身を委ねてくるものだろう。いきなりルーンをぶっ放してくるとは……」  それでも魔女か、とでも言いたげな口ぶりだ。どうしてこちらが空気を読めていない雰囲気になるのか、シャルロッテとしては釈然としない。 「生娘で価値があるのは聖女くらいだぞ。魔女なら男や我々悪魔を(たぶら)かすくらいの器量がなくてどうする」 「女を武器にせず大魔女に成り上がったら、それはそれで価値があるんじゃない?」  減らず口を叩くシャルロッテにヘレパンツァーはじっと視線を送る。おかげで言葉を続けられず、逆にシャルロッテとしては居心地が悪くなった。  そして彼の唇がゆっくりと動く。 「価値? まぁ、こんな凹凸もない貧相な体を抱いたところでな」  あっけらかんとした感想に、無意識に次のルーンを唱えようとした。そこで部屋にノック音が響く。 「おはよう。すごい音がしたけれど、どうやら目が覚めたらしいね」 「あなた……」  現れたのは、エーデルシュタイン騎士団の第一分団長フィオン・ロヤリテートだった。  壮絶な痴話喧嘩で片付けるのには無理のあるこの状況を見て、平然と笑顔でいられるのはある意味、分団長としての器の大きさか。  彼はシャルロッテと対峙したときと同様、濃紺の軍服を身に纏っていた。
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