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「思わないさ。ああ、ちなみにクローディアは医師に診せしばらくの安静が必要らしく、こちらで見張りをつけて保護している」
悪魔に体を乗り移られていたのだ。精神力はもちろん体力の消耗も激しいだろう。
特段、心配していたわけではない。フィオンはさらにペネロペについても言及する。
「君に対する三年前の一方的な称号の剥奪や虚偽の申告について追及している。おそらく爵位の剥奪は免れないだろう」
「彼女を庇うつもりはないけれど、シャルロッテ・シュヴァン公爵令嬢は三年前に死んだの。今、あなたの目の前にいるのは紫水晶の魔女シャルロッテよ」
シャルロッテの主張に、フィオンは穏やかに微笑む。
「とりあえずなにかを口にした方がいい。誰か人を呼ぼう。あとで城の中を案内するよ」
さらりと言いまとめ、彼はシャルロッテに背を向け部屋を出て行く。そのうしろ姿を眺め、シャルロッテは呆然としていた。そこに傍観者が口を挟む。
「お前、このままだと伝説の大魔女を通り越して王家を救った聖女扱いだな」
からかい口調のヘレパンツァーにシャルロッテは鋭い視線を送る。しかし相手は意に介していない。
「よかったじゃないか、生娘なのが役に立つときがきて」
「ちょっと、黙っててくれる?」
すぐさま切り返し、シャルロッテは唇をかみしめる。
冗談じゃない、聖女などありえない。
この後、彼女の支度を整えるよう命じられ、部屋を訪れたメイドはあまりにもひどいベッドの惨状に悲鳴をあげた。
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