聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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「……お前、もしかして魔女なのか?」 「少なくとも天使じゃないわね」  肩をすくめて答えると少年は一歩大きく踏み出した。 「やっぱり……呪いだったんだ」  大きく目を見開き、彼は声を震わせる。シャルロッテとしては、まったく話が読めない。  そのとき前触れもなく木製の大きな扉が開いた。おかげで少年もシャルロッテの注意もそちらを向く。 「ヨーゼフ・マーラーはいるか?」  突然の訪問にも関わらず男は端的に告げた。長めのダークブロンドの髪をひとまとめにし、従者を連れている。身なりや態度からしてもそれなりの身分の者だと推測できた。 「ラ、ライマーさま」  その証拠に少年の顔は真っ青になり、頭を下げた。来訪者の存在に気づいたのか、奥から年配の男性が姿を現す。  柔らかい白髪を撫でながら彼は装着していたモノクルをはずした。少年と面影が似ているので、おそらく血縁者だろう。 「ライマーさま、今日はどうされましたか?」 「あの絵はちゃんと処分したんだろうな」  間髪を入れずに自分の父親よりもおそらく年上であろうヨーゼフにライマーは鋭く問う。 「画廊から下げてはいますが、まだ……」  髪を触りながら歯切れ悪く答えるヨーゼフにライマーは括目し、眉をつり上げた。 「ネスがあの絵を見た日からずっと寝込んでいるんだ。なにが永遠の愛を叶える絵だ。あの絵は呪われている! 必ずあの絵を処分しろ」 「は、はい」  一気に捲し立てるライマーにヨーゼフは頭を下げるばかりだ。そんな祖父を、ヨハンは悔しそうに見つめるが、なにも口を挟まない。
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