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「ねぇ」
ところが、シャルロッテがまったく遠慮もなく間に入る。
「なんでその彼女が寝込んでいる理由が絵の呪いになるの? 人間だから体調を崩すなんて珍しくもないでしょう」
「なんだ、お前……」
ライマーは鼻息を荒くし、シャルロッテを睨みつける。それをものともしないシャルロッテだが慌てたのは少年の方だった。
「こ、こいつはうちとは無関係です。画廊を訪れていたただの客で……」
とにかく画廊の人間ではないと必死に訴えかける。ヨーゼフと少年にとってもシャルロッテの存在はまったく予期していないもので、彼女のせいでライマーの機嫌を損ねるのはいい迷惑だ。
ライマーも妙な第三者の存在にわずかに毒気を抜かれる。
「ふんっ、もう二週間も床に臥せているんだ。しかも医者に診せても一向に回復しない。こんなことは今までなかった。すべてはあの絵を見たせいなんだ!」
「あー、はいはい。よくわかったわ」
感情のこもっていない声でシャルロッテは返す。ライマーはさっさと踵を返し、従者は慌てて彼の後を追っていく。
「大変ね、彼女を思って眠れない日が続いているみたいね。今にも倒れそうなのはあなたの方だと思うけれど?」
シャルロッテの投げかけに、ライマーは目を丸くして振り返った。そして憎しみと苛立ちの込めた眼差しをシャルロッテにぶつけ、結局何も言わずに去っていく。
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