聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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「な、なんだよ。やっぱり呪いなのか? ライマーさまの言うことが本当で、お前がうちに呪いをかけたのかよ!」  唾も飛ばす勢いで少年が声を張り上げる。まさに犯人を見つけたと言わんばかりの口調だ。シャルロッテが訝し気な表情になる。 「さっきから話にあがっている呪いって? ここ呪われてるの?」 「そうだ。お前らのせいで、うちは潰れそうなんだよ!」  ヨーゼフが、彼の肩に触れ制そうとしたが、少年の勢いは止まらない。 「幸せを呼ぶ絵として話題だったのに、その絵を見た後、ヴァネッサさまは体調を崩され、ライマーさまは不幸を招く呪いの絵だと連日うちに文句を言うようになって……。おかげで人も全然来なくなって、じいちゃんもすっかり落ち込んじまって」  溜まっていた鬱憤(うっぷん)を晴らし、少年は悔しさを滲ませうつむいた。シャルロッテは素早く立ち上がり、少年へ近づく。気配を感じ見上げれば、紫の瞳に見つめられ少年はぎょっとした面持ちになる。 「な、なんだよ。やんのか!?」  わずかに声が震えているのは、急に冷静になったからだ。相手は術を操る魔女だ。なにをされるかわかったものではない。  シャルロッテは無表情のまま少年のそばまで歩み寄り、唐突に正面から彼の両肩に手を置いた。 「そっ」 「ひっ」  勢い余ったシャルロッテと同時に少年が引きつったような小さな声を漏らす。  ヨーゼフが庇うようにふたりの間に割って入ろうとしたが、その瞬間に女の手は彼から離れた。そして彼女の口角がゆるやかに上がる。
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