聖女の汚名返上いたします！私は悪徳大魔女ですが？

聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

　これはきっと気まぐれだ。

　シャルロッテとヨハンは同じことを心の中で唱える。初対面の、しかも悪魔もつれている不審極まりない魔女を頼るなど。

　今の状況を祖父が知ったらどう思うだろうか。後悔と少しばかりの期待を交錯させ、ヨハンは例の絵をしまっている部屋にシャルロッテとヘレパンツァーを案内する。

　誰もいない画廊には様々な絵や美術品が飾られているが、今はどの作品にも光も人の目も向けられず、落とされる影がそれらになんとも言えない薄気味悪さを与えた。

　普段はどのように賑わっているのか知らないが、寂寥感(せきりょうかん)が漂い殺伐とした雰囲気だ。

　永遠の愛が叶うと謳われていた絵は、不幸をもたらす呪いの絵に変わってからギャラリーに飾られなくなってしまった。今では画廊の裏側にある小さな部屋に仕舞われ、日の目を見ずにいる。

　古くとも清潔感のある画廊とは違い、小さなドアを開けると埃とカビ臭さが鼻につく。

　とくにシャルロッテは気にもせず、暗闇に目を凝らすとヨハンが慣れた手つきで洋燈(ランプ)に明かりを灯し視界を明瞭にした。

　乱雑に並べ置かれた絵画が足元にはあり、絵を保管するにはあまり適した環境ではない。ここは売り物にならず、修復も不可能だと判断された、いわば作品の墓場だ。

　そこであきらかに他のものとは一線を画した扱いを受けている絵を奥の棚に見つける。布が掛けられ、立てかけて置かれている“それ”が例の絵だと直感でわかった。

　洋燈を手に持ったヨハンがそっと近づき、慎重に布をはずす。すると隠されていた絵が姿を現した。