聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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 とりあえず日も落ちつつあり、すぐに移動しなくてはならないわけでもない。シャルロッテとヘレパンツァーはしばし画廊で滞在することになった。ふたりには商談に使用する部屋が宛がわれる。 「あら?」  中に入ると、意外なものがシャルロッテの目に飛び込んできた。 「あ、これはすぐ片付ける」  気まずそうにヨハンが駆け寄り、イーゼルにセッティングされたキャンバスを仕舞おうとする。 「あなた、絵を描くの?」 「趣味で、だよ。ここでじいちゃんの手伝いとして(いた)んだ絵画の修復作業の手伝いもしているんだ。その影響で……」  照れくささからぶっきらぼうにヨハンは答えた。 「へー。私もちょっと描いてみていい?」 「お前、絵なんて描けるのか?」  軽いノリに間髪を入れずに返したのはヨハンではなくヘレパンツァーだった。ヨハンも同じ気持ちだ。ふたりの男に疑いの眼差しを向けられた魔女は、得意げに胸を張る。  ヨハンからの許可を得て、シャルロッテは意気揚々とキャンバスの前に座った。キャンバスは地塗りされ、これから彩られるのを待っている。 「けっこう好きよ。まぁ、見てなさいって」  ヨハンに好きにしてもいいと言われたシャルロッテは遠慮なくキャンバスに筆を滑らせた。鼻歌混じりに絵に向かう姿はなかなか様になっている。  ヨハンは夕飯の準備をしてくると一度席をはずし、ヘレパンツァーはやれやれと肩をすくめソファに腰を下ろした。人間の姿で、行儀悪く肘掛け部分に足を乗せ姿勢を崩す。
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