聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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 翌日、朝から血相を変えたヨハンがライマーとヴァネッサの婚約破棄をシャルロッテとヘレパンツァーに告げてきた。町はこの話題で持ち切りらしくどうやら事実らしい。  さすがにその事態は予想していなかったシャルロッテとヘレパンツァーだが、それよりも目の前の少年の動揺が火を見るよりも明らかだった 「なんであなたが婚約破棄されたような顔をしているのよ」  ライマーとヴァネッサの婚約破棄を報告したヨハンは今にも泣き出しそうな表情だ。 「だって、昨日の今日でなにがあったんだよ。こうなったら本当にあの絵の呪いのような気がして……」 「男女の仲なんていつどうなるかわからないものさ」  ヘレパンツァーの言葉にヨハンは肩を落とした。どっちみち今の状況はさらに絵の呪いの信憑性を高めてしまう。ここまでくると乗りかかった船だ。シャルロッテはさっそく行動を起こす。  領主を務めるレーンスヘル家の館は、その地位を象徴するかのように立派なものだった。門の右上には釣り鐘が用意され、紐が垂れている。これで来訪を知らせるらしい。  シャルロッテは臆すことなく派手に鐘を鳴らした。まずは正攻法でいく。ヘレパンツァーは声をかけたが同行を拒否したので置いてきた。   ヘレパンツァーがいたところで、胡散臭さが増すだけなのだが、紫の瞳に黒衣の女性ひとりというのもなかなか怪しい。  その証拠にドアを開けてシャルロッテを見たメイドは顔いっぱいに不信感を溢れさせる。
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