聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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「で、その欲しいって言ってきた女性はどうなったの?」 「それがライマーさまとヴァネッサさまがご覧になった後、もう一度くらいやってくるかと思ったんだけれど、姿を現さなくて……。旅人だったのかもしれないってじいちゃんが」  ヨハンは大きく息を吐いた。なんともタイミングが悪い。後悔先に立たずとはこのことだ。しかし過去を悔やんでもしょうがない。ヨハンはわざと明るい声で気持ちを切り替える。 「ところでさ、シャルロッテは魔女なんだろ? 王家を救った魔女とかって心当たりないか?」  軽い口調のヨハンにシャルロッテは硬直した。ヘレパンツァーに至っては、赤い瞳を大きく見開いている。 「……なに、それ?」  動揺を悟られないよう、抑揚なくシャルロッテは聞き返した。シャルロッテの心の機微など知る由もなくヨハンは「それがさー」と屈託なく続ける。 「今日、エーデルシュタイン騎士団の団員が突然やってきたんだよ。なんでも王家の危機を救った魔女を探しているんだとか」  シャルロッテは一瞬、反応に迷う。この話題を振ってきた相手の意図が読めないからだ。当のヨハンはシャルロッテの返事など気にせず、どこか鬱陶しそうな表情になる。 「でも、関係ないと思ってさっさと帰ってもらったんだ。ったく、ただでさえ呪いの絵とか変な噂が広まっているのに、騎士団の人間にまで出入りされたらますますうちの画廊になにかあるんじゃないかって勘繰られるだろ」 「そうはいっても、俺たちを招き入れているじゃないか」  すかさす口を挟んだのはヘレパンツァーだ。あからさまに普通の人間とは異なる彼に、ヨハンはもう動じることなく反論する。
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