聖女ではないと証明するため派手に呪ってみます

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 次期領主が言い出したとはいえ、あのなにも感じない絵が呪いだと恐れられる状況は納得できない。  呪いは自分のせいだと便乗することを望んではいるが、そこに至るまでに勝手な憶測をさらに呼ばせて話をややこしくするのは望んでいない。  下手な動きをするつもりはないと伝えると、ヨハンはホッと胸を撫で下ろす。しかし、どうも複雑だ。 「俺、お前たちのことがまったく理解できない」  正直な感想を述べると、ヘレパンツァーが首を傾げる。 「そうか? こいつはただひたすら伝説の大魔女を目指している単純馬鹿以外の何者でもないぞ」 「パンター、なんて言い方すんのよ!」 「事実だろ」  冷たい視線を投げかけるとシャルロッテが眉間に皺を寄せる。そんなふたりをヨハンは呆然と見つめた。  続けて言いしれぬ奇妙さが込み上げる。たしかに彼らは正義や善意などとは無縁だ。けれど――。 「なんとなくお前らが極悪非道な連中じゃないのは、わかったよ」  かすかな笑みと共に零したヨハンにシャルロッテは目を剥いた。ヨハンは作業途中だったことを思い出し、さっさと部屋を後にする。  シャルロッテは肩を震わせ、勢いよく立ち上がった。 「いいわ。極悪非道なところを見せてあげようじゃない」  口角を上げて静かに闘争心を燃やす。紫水晶の瞳が妖しく揺らめくが、ヘレパンツァーとしては予想通りの展開にもういちいちツッコむ気にもなれない。  ソファ前の机を横に移動させ、スペースを空けた後、シャルロッテはその場におもむろにしゃがみ込み懐から小さな石を取り出した。  淀みなく描き出すのは正確無比の魔法陣だ。複雑な文言と形状を魔術書なしに作成するのは、なかなか腕がいる。
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